「家族に介護が必要になったので、自宅をリフォームしたい」
「でも、バリアフリー工事って一体いくらかかるのかしら…予算も限られているし不安…」
そんな風にお悩みの方も多いのではないでしょうか。
大切なご家族が住み慣れたわが家で安全に暮らすため、そして介護をするあなたの負担を少しでも軽くするために、住環境を整えることはとても大切です。
でも、まとまった費用のことを考えると、なかなか一歩を踏み出せないこともありますよね。
そんな時にぜひ知っておきたいのが、国の公的介護保険などを利用した「介護リフォームの補助金(住宅改修費の支給)」という心強い制度です。
この制度を上手に活用すれば、一定の条件を満たすことで、リフォーム費用の一部が国から支給され、経済的な負担をグッと抑えることができます。
そこで今回は、初めての方でも迷わず手続きができるよう、補助金がもらえる条件(支給要件)や具体的な対象工事、いくらもらえるのか(支給額)、そして損をしないための申請方法まで、優しく詳しく解説します。
わが家のリフォーム費用がどれくらいお得になるかのシミュレーションや、見落とされがちな注意点もご紹介しますので、ぜひ最後まで参考にしてくださいね。
介護リフォームの補助金制度とは?まずは基本をチェック
それではまずは、介護リフォーム補助金制度がどういうものなのかを確認していきましょう。
介護保険が適用される「住宅改修費支給」の仕組み
一口に「介護リフォームの補助金」と言ってもいくつか種類がありますが、その基本となるのが公的介護保険のメニューである「居宅介護住宅改修費(または介護予防住宅改修費)」の支給制度です。
これは、要介護認定(要支援1・2、要介護1〜5)を受けた方が自宅をバリアフリー化する際、工事にかかった費用の一部を介護保険から給付してもらえる仕組みです。
この制度の一番の特徴は、普段使っているヘルパーさんの派遣やデイサービスの利用といった「毎月の利用限度額(支給限度基準額)」とは完全に別枠(別腹)として用意されている点です。
そのため、「今月はデイサービスをたくさん使ったから、リフォームの補助金が減っちゃうかしら…」なんて心配をする必要は一切ありません。安心して、必要なタイミングで計画を立てることができます。
なぜ補助金が出るの?リフォームの目的と自立支援への効果
国がこのように手厚い補助金を用意しているのには、とても大切な理由があります。
それは、高齢者の方が住み慣れた自宅で、できる限り自分の力で安全に暮らせるようにすること(自立支援)、そして「在宅介護をがんばるご家族の負担を減らすこと」です。
例えば、段差をなくして手すりをつければ、これまでは車椅子を押してもらわなければ移動できなかった方が、ご自身の力でトイレに行けるようになるかもしれません。
そしてそれは、ご本人にとって大きな喜びや自信(健康維持)につながりますし、何よりも毎日付き添って介護をしているあなた自身の体と心の負担を、劇的に軽くしてくれます。
厚生労働省も在宅介護を強く推進しているため、このバリアフリーリフォームは国が応援してくれる立派な「自立サポート」なのです。

介護リフォームを検討すべき「2つのタイミング」
「リフォームって、いつやったらいいの?」と迷う方も多いですが、基本的には次の2つのタイミングで検討するのがおすすめです。
介護が必要になる前(予防としての準備)
「最近少し足腰が弱ってきたみたい」「つまずくことが増えたな」と感じたら、要介護認定の申請とあわせて、早めに手すりの設置などを検討しましょう。
実は、高齢者の方が一番ケガをしやすいのは「住み慣れた自宅の中」なのです。
元気なうちに転倒のリスク(事故)を未然に防ぐ環境を作っておくことは、長期的な安心につながります。
介護が始まった後(具体的な状態に合わせる)
退院して自宅に戻ってくるタイミングや、車椅子生活が始まったタイミングなどです。
この時は、現在の身体の状態や、実際に「誰が、どのような介助をするのか」という具体的な動線に合わせて、浴室やトイレなどの改修をピンポイントで行うことになります。
これに当てはまればOK!補助金(住宅改修費)の5つの支給要件
介護保険からリフォームの補助金を受け取るためには、次の5つの条件(支給要件)をすべて満たしている必要があります。
どれか一つでも抜けていると、せっかく工事をしても対象外になってしまうので、しっかり確認しておきましょう。
【要件1】要介護認定(要支援1・2、要介護1〜5)を受けていること
この制度は介護保険の仕組みを利用するため、まだ認定を受けていない段階(自立の状態)では利用できません。
必ず、市区町村の窓口で申請を行い、要支援1以上の認定を受けてから工事の手続きを進めましょう。
【要件2】介護保険被保険者証に記載された住所の住宅であること
補助金の対象となるのは、要介護者ご本人が実際に生活している、住民票の住所地にある自宅のみです。
「普段は長男の家にいるけれど、住民票はまだ実家のまま」というようなケースでは、長男の家のリフォームには補助金が出ないため注意が必要です。
【要件3】現在、介護施設への入所や病院への入院をしていないこと
原則として、ご本人が病院に入院中だったり、介護老人保健施設(老健)などに入所している間は、この住宅改修費は利用できません。
「退院して自宅に戻る前に、あらかじめ工事を済ませておきたい」という場合は、一時的に事前申請を受け付けてくれる特例(自治体ごとのルール)がありますので、必ず着工前にケアマネジャーさんや市区町村の窓口へ相談してくださいね。
【要件4】原則として過去に上限額まで住宅改修の給付を受けていないこと
この補助金は、後述する通り「お一人につき生涯20万円までの工事費」が上限となっています。
そのため、すでに過去に上限まで使い切っている場合は、新しく工事をしても補助金は出ません。
ただし、これにはリセットされる例外ルールもあります(詳しくは後ほど解説します)。
【要件5】工事着工前に、市区町村へ「事前申請」を完了していること
これが一番やりがちな大失敗なのですが、「市役所に何も言わずに先に工事を始めてしまった」場合は、どんなに素晴らしいバリアフリー工事であっても、1円も補助金が出なくなってしまいます。
必ず「工事の前にプランを提出して市の承認をもらう」というステップを踏む必要があります。
補助金はいくらもらえる?支給額の上限と計算方法
それでは、実際に補助金はいくらもらえるのかを確認していきましょう。
工事費用の限度額は「20万円」!自己負担は所得に応じて1〜3割
では、実際にいくらくらいお金が戻ってくるのでしょうか?
介護保険の住宅改修費支給では、支給の対象となる工事費用の上限(限度額)が「一生物で20万円」と決められています。
この20万円の枠の中で、ご本人の所得(前年の収入など)に応じて、工事費の「1割」「2割」または「3割」を自己負担することになります。
【最大18万円支給】自己負担割合別の具体的な払い戻し額
ご本人の「介護保険負担割合証」に記載されている割合によって、手元に戻ってくる(支給される)最大の金額は以下のようになります。
【例】20万円のリフォーム工事を行った場合

例えば、1割負担の方が総額20万円のリフォーム工事を行った場合、実際のあなたの負担は「2万円」だけで済み、残りの「18万円」が補助金としてカバーされる、という大変ありがたい仕組みです。
もし工事費用が20万円を超えてしまった場合(例えば総額25万円の工事など)は、上限である20万円までの分しか補助が出ないため、超えた分の5万円+自己負担額(2万円)=合計7万円が自己負担となります。
1回で使い切らなくても大丈夫!「分割利用」のルール
「今回は手すりをつけるだけで5万円しか使わなかったけれど、残りの15万円分の枠はどうなっちゃうの?」と心配になりますよね。
安心してください。この上限20万円という枠は、何回かに「分割して」使うことができます。
今回は玄関に5万円分の手すりをつけ(残りの枠15万円)、数年後に足腰の状態が変わったら、残りの15万円を使ってトイレや浴室の段差解消工事をする、といったように、ご本人の身体の変化に合わせて計画的に枠を使い切ることが可能です。
例外的に「もう一度20万円まで」再利用・リセットができる条件
原則として「一生に一度、合計20万円まで」というルールですが、実は特定の条件を満たすと、この20万円の枠が「リセット」され、もう一度新しく20万円までの補助を受けられる例外が2つあります。
引っ越し(転居)をしたとき
古い家で20万円の枠を使い切っていても、新しく別の住宅へ引っ越した場合は、その新しい家で改めて20万円の枠がスタートします。
要介護度が「3段階以上」重くなったとき
これが実務で一番よく使われる特例です。
最初の住宅改修を行ったときの「要介護状態の区分」と比べて、ご本人の状態が3段階以上重くなった場合、1回に限り20万円の枠がまるごと再支給(リセット)されるのです。
【要介護度の「3段階アップ」の数え方】
介護度の区分は以下のように並んでいます。
「要支援1」→「要支援2・要介護1」→「要介護2」→「要介護3」→「要介護4」→「要介護5」
(※「要支援2」と「要介護1」は、リフォームの計算上は「同じ段階」として数えられます)
【例】最初に「要支援1」で手すりをつけた方が、その後に「要介護3」になった場合
「要支援1」から数えて、①要支援2/要介護1 → ②要介護2 → ③要介護3 となり、ちょうど「3段階重くなった」ことになるため、20万円の枠が復活します!

わが家はどこが対象?補助金が使える介護リフォーム工事の種類
介護保険の補助金は、どんなリフォーム工事にでも使えるわけではありません。
国のルールで「対象となる工事の種目」が以下の6種類に厳密に定められています。
わが家でやりたい工事が当てはまっているか、チェックしてみてください。
転倒防止と移動をスムーズにする「手すりの取り付け」
高齢者の方がバランスを崩して転倒するのを防ぎ、自力での移動や立ち座りを助けるための手すりを設置する工事です。
- 主な場所:玄関、廊下、階段、トイレ、浴室など
- ポイント:壁の補強をしてネジでしっかりと固定する工事が対象です。ご本人の身長や使いやすい手の向きに合わせて、縦型・横型などを適切な高さで取り付けます。
車椅子でも安心な「段差の解消工事」
つまずきやすい部屋と廊下の間の敷居を平らにしたり、玄関のあがりかまち、浴室の入り口などの段差をなくす工事です。
- 主な工事:段差を削って平らにする、スロープを設置して固定する、浴室の床をかさ上げして脱衣所との段差をなくすなど。
滑り止めと移動の円滑化のための「床材・通路面の材料変更」
畳からフローリングへ変更したり、濡れると滑りやすい浴室のタイルを滑りにくい床シートに変えるなど、安全に歩きやすくするための工事です。
- 主な工事:畳からフローリング・クッションフロアへの変更、浴室の滑りにくい床材への変更、玄関アプローチの滑り止め舗装など。
軽い力で開閉できる「引き戸などへの扉の取替え」
一般的な「開き戸(手前に引くドア)」は、ドアを開ける際にご本人が一歩後ろに下がらなければならず、バランスを崩して転倒するリスクがあります。これを、横にスライドさせるだけの「引き戸」や「折れ戸」に交換する工事です。
- 主な工事:開き戸から引き戸・折れ戸への交換、ドアノブを回しやすいレバーハンドルへ変更するなど。
立ち座りを楽にする「和式から洋式便器等への取替え」
しゃがむ姿勢がツラい和式トイレを、足腰への負担が少ない洋式トイレ(温水洗浄便座など)にまるごと交換する工事です。
- 注意点:すでに洋式トイレだけど、お尻を温める「暖房便座」に変えたい、といっただけの工事は対象外となります(あくまでの和式から洋式への変更や、向きの変更などが対象です)。
上記の各工事に伴って必要となる「付帯工事」
上記の工事を安全に行うために、どうしてもセットで必要になってしまうリフォーム工事のことです。これも一緒に補助金の対象として認められます。
- 具体例:手すりをつけるための「壁の補強下地工事」、洋式トイレに変えるための「床の解体や給排水配管の工事」、段差をなくすためにドアの高さを変える工事など。
これは対象外!間違えやすい工事の具体例
「お風呂が寒いから最新のシステムバスにまるごと変えたい」
「古くなったキッチンを使いやすくリフォームしたい」
というのは、一見バリアフリーに関係がありそうですが、介護保険の補助金(住宅改修費)としては一律で対象外となります。
あくまで「手すりをつけた」「段差をなくした」という介護に必要なピンポイントの工事部分にしか補助金は出ないため、見積もりをとる際はリフォーム業者さんに「介護保険の対象になる部分」と「それ以外の一般のリフォーム部分」をハッキリと分けてもらうようにしましょう。
いくらお得になる?費用対効果とコスト削減シミュレーション
介護リフォームの補助金(住宅改修費支給)を利用すると、実際に家計の負担がどれくらい軽くなるのか、具体的な数字でシミュレーションしてみましょう。
手すり設置・段差解消を行った場合の自己負担額シミュレーション
【例】1割負担の方が「玄関への手すり設置」と「あがりかまちの段差解消(スロープ設置)」を行うケース
- 一般的なリフォーム工事費用の総額:15万円
- 内訳:壁の補強+手すり設置(6万円)、玄関アプローチのスロープ設置(9万円)
- 補助金(住宅改修費)を申請した場合
- 支給対象工事費:15万円(上限20万円の枠内に収まっています)
- あなたの実際の自己負担額(1割):1万5,000円
- 保険から戻ってくる補助金額(9割):13万5,000円
なんと、普通に工事をすれば15万円かかるリフォームが、実質1万5,000円というお財布にとても優しい費用で実現できてしまうのです。
さらに、20万円の枠のうち5万円分がまだ残っているため、将来的にトイレや浴室の改修が必要になった際、その残りの枠を再び使うことができます。
住宅リフォームによる「将来の転倒・医療費削減効果」の視点
「今すぐリフォームしなくても、まだだましだまし生活できるかしら…」
と工事を先延ばしにしたくなる気持ちも分かります。
しかし、ここで考えておきたいのが「怪我をして入院したときのコスト」です。
高齢者の方が自宅内の段差でつまずいて骨折し、そのまま入院・手術となった場合、高額療養費制度を利用したとしても、医療費や差額ベッド代、介護タクシー代などで、一時的に数十万円単位の大きな出費が発生することが珍しくありません。
また、一度長期入院をすると筋力が落ち、要介護度がハッキリと重くなってしまうリスク(悪循環)もあります。
実質1万5,000円〜2万円前後の自己負担で自宅の危険個所(つまずき、滑り)を解消しておくことは、将来の大きな医療費や介護費用の発生を防ぐための、非常に賢くて価値のある「事前投資」と言えるのです。
あわせて知っておきたい「特定福祉用具購入費の支給(上限10万円)」の併用
さらに費用負担を軽くするための耳寄りな情報として、住宅リフォーム(工事)とは別に、「特定福祉用具購入費の支給」という制度も併用可能です。
これは、ポータブルトイレや入浴用いす(シャワーチェア)、浴室用すのこなど、工事を伴わない「肌に触れる介護用品」を購入する際、毎年10万円を上限として、同じく1〜3割の自己負担で購入できる制度です。
「お風呂の床が滑るからリフォームしたいけれど、浴槽が深くてまたぎにくいのも解決したい」
という場合、床の材料変更はリフォーム補助金(住宅改修費)で行い、浴槽内に入れる「入浴用いす」は福祉用具購入費の枠(上限10万円)で安く手に入れる、といったように2つの制度を賢く組み合わせることで、リフォーム工事の総額を大幅に抑えることができます。
損をしないために!補助金を受け取るための申請手順と必要書類
前述の通り、介護リフォームの補助金は「市役所に内緒で勝手に工事を始めると、1円ももらえなくなる」という厳しいルールがあります。
損をしないために、絶対に失敗しない正しいステップを踏みましょう。
【着工前の事前申請】が必要!ケアマネジャーへの相談から計画書提出まで
申請手続きのスタートから工事が始まるまでは、以下のような流れで進みます。
- ケアマネジャーに相談する
まずは、担当のケアマネジャー(介護支援専門員)に「ここをリフォームしたい」と相談します。
ケアマネジャーは本人の身体状況に合った最適なリフォームプランを一緒に考えてくれるだけでなく、申請に必須となる「理由書」を作成してくれる大変心強い味方です。
- リフォーム業者を選び、見積りをとる
介護リフォームの経験が豊富な業者(工務店)に見積もりや図面の作成を依頼します。
- 市区町村へ「事前申請」を行う(工事着工前)
工事を始める前に、市区町村の介護保険窓口へ申請書類を提出します。
この書類を市が審査し、「この内容なら介護保険の対象として認めますよ」というお墨付き(承認)をもらって初めて、工事に着工することができます。
事前申請に必要な書類一覧(理由書・見積書・写真など)
事前申請の段階で、市役所へ提出する主な書類は以下の通りです。
- 介護保険居宅介護(予防)住宅改修費支給申請書(または計画書)
- 住宅改修が必要な理由書(ケアマネジャーなどが作成したもの)
- 工事費見積書(内訳が細かく書かれたもの)
- リフォーム箇所の平面図(朱書きなどで改修内容が分かるもの)
- 住宅改修前の写真(撮影日付が入り、どこに手すりをつけるかなどを朱書きしたもの)
- 住宅の所有者の承諾書(リフォームする家の名義がご本人以外、たとえばお子さんの名義などの場合に必要)
【工事完了後の事後申請】と「償還払い(払い戻し)」の仕組み
無事に事前申請の承認が下りたら工事を実施し、完成した後に「事後申請」を行います。
介護保険の補助金は、原則として「償還払い(しょうかんばらい)」という仕組みをとっています。
これは、一度あなたがリフォーム費用の「全額(10割)」を施工業者へ支払い、その後に市役所へ事後申請を行うことで、約1〜3ヶ月後にあなたの指定口座へ補助金(9割〜7割分)がカチッと払い戻される(還付される)というシステムです。
【知っておくと便利!】「受領委任払い」が使える自治体も
一時的とはいえ、一度に数十万円という全額を立替払いするのがお財布に厳しい場合もありますよね。その場合、自治体によっては「受領委任払い」という方法を選べるケースがあります。
これは、あなたが最初から自分の「自己負担分(1〜3割)」だけを業者に支払い、残りの補助金分(9〜7割)は市役所から直接リフォーム業者へ支払ってもらうという、立替なしで済む大変便利な仕組みです。
お住まいの地域で利用できるか、事前にケアマネジャーへ確認してみるのがおすすめです。
事後申請に必要な書類一覧(領収書・完了後の写真など)
工事が無事に完了したら、以下の書類を揃えて速やかに(原則30日以内など)事後申請を行います。
- 工事費の領収書(必ず被保険者であるご本人の氏名が記載された原本)
- 工事費内訳書(実際に使った材料や工事内容の明細)
- 住宅改修後の写真(事前申請と同じアングルで撮影された、日付入りのもの
全国の自治体ごとの介護リフォーム補助金・助成金制度の比較
リフォームを計画する上で、国が用意している介護保険の「上限20万円」だけでは、大きな工事をする際にどうしても予算が足りなくなってしまうことがあります。
そんな時に視野に入れたいのが、各市区町村が独自に運営している「高齢者向け住宅リフォーム助成事業」です。
介護保険と市区町村独自の助成金制度の違いとは?
自治体独自の助成金は、国(介護保険)の制度をさらに手厚く補うために用意されています。その特徴を分かりやすく比較してみましょう。
- 国の介護保険(住宅改修費)
- 工事費上限:一律20万円
- 条件:必ず要介護認定が必要
- 工事内容:手すり、段差解消など指定の6種類のみ
- 自治体独自の助成金(例:新潟市、宮崎市など)
- 工事費上限:20万円〜60万円程度(自治体によって大きく異なります)
- 条件:要介護認定が必要な場合もあれば、介護手前の「おおむね65歳以上の高齢者世帯」で所得制限を満たせば利用できるケースも
- 工事内容:お風呂の浴槽まるごと交換、給湯設備の交換など、介護保険の「対象外」になる工事まで幅広くカバーしてくれる傾向がある
自治体の助成金と介護保険の住宅改修費は「併用」できる?
多くの場合、「まず国の介護保険の20万円枠をきっちり使い切ること」を条件に、それを超えてしまった高額な費用や対象外の工事部分について、自治体独自の助成金を併用(上乗せ)して申請できるという形をとっています。
ただし、自治体によっては「他の制度と併用はできない」「地元の指定業者に依頼した場合に限る」といった独自の細かいルールが設けられているため、事前の確認が必須です。
自分の地域で最も有利な補助金制度を見極めるためのポイント
あなたが最もおトクに、損をせずにリフォームを行うためには、以下の3つのポイントを地元の窓口やケアマネジャーに確認してみてください。
- 「上乗せできる自治体の助成金制度はあるか?」
- 「その制度は、介護保険の住宅改修費と併用が可能か?」
- 「所得制限や、工事着工前の提出書類に特別な決まりはあるか?」
地元の市区町村ホームページの「高齢福祉課」や「シニア向けの住まいサポート」のページをチェックするか、地域包括支援センターへ直接お電話で聞いてみると、詳しく教えてもらえます。

後悔しないために知っておくべき、介護リフォームの注意点と失敗例
良かれと思って大金をはたいて行ったリフォームでも、事前のシミュレーションが足りないと、かえって使いにくくなってしまうという悲しい「失敗例」が実はたくさんあります。
【失敗例】手すりの位置や高さが本人の身体に合わなかった
介護リフォームの失敗で、ダントツで一番多いのが「手すり」に関するトラブルです。
- よくある原因:「一般的な標準の高さ(床から75〜80cm程度)」で業者に言われるがまま取り付けてしまった。
- 結果:実際に車椅子から立ち上がろうとしたら高すぎて力が入らない、ご本人の手が短くて届きにくい、手すりが太すぎてしっかり握れず滑ってしまう、といった事態に。
【対策】
手すりをつける際は、必ずご本人にリフォーム前の現場に立ち会ってもらい、実際に壁に手を当てて「ここなら楽に力が入る」「この高さが立ち上がりやすい」という位置を、工事前にケアマネジャーや業者と一緒に1cm単位で細かくマスキングテープなどで印をつけて確認しましょう。
【失敗例】将来の要介護度の変化を見越さず、早すぎる改修をしてしまった
「将来、車椅子になるかもしれないから」と、まだ元気に歩ける段階で、何百万円もかけてトイレを広くしたり、廊下の幅を拡張するような大がかりな改修を先走って行ってしまうケースです。
- よくある原因:今の身体の状態には不要なリフォームまで先回りして行ってしまった。
- 結果:いざ数年後に本当に介護が必要になったときには、予想と違って寝たきりの状態に近く、別の場所に手すりが必要になったり、せっかく広げたトイレの動線が身体に合わなくなって、介護保険の20万円の貴重な枠を無駄にしてしまった。
【対策】
介護リフォームは、「今まさに困っていること」「近い将来(数ヶ月〜1年以内)に確実に必要になること」に絞って、その都度ピンポイントで行うのが鉄則です。
介護保険の枠を、上手に「分割利用」できるのも、そのためなのです。
失敗を避けるには、要介護者と介護者「双方の利便性」を考える
リフォームをプランニングする際、どうしても「介護を受けるご本人」の安全ばかりに目が向きがちですが、実際に毎日その場所で介助をする「あなたの使いやすさ(介護側の利便性)」も同じくらい大切に設計してください。
例えば、浴室の入り口の段差をなくしたとしても、洗い場があまりにも狭いと、あなたが後ろからご本人を支えて体を洗う際、あなたの足の踏み場がなくなり、腰を痛めてしまう原因になります。
扉を引き戸に変える際も、車椅子が通れる広さだけでなく、あなたが横に立って一緒にサポートできる空間が残っているかなど、「二人でその空間に入ったときの心地よさ」を必ずイメージすることが大切です。
安心できる「介護リフォーム業者」の正しい選び方
介護リフォームを成功させる最後の鍵は、信頼できる「パートナー(施工業者)」を見つけることです。
そこで、信頼できる施工業者を見つけるためのポイントをご紹介します。
介護・バリアフリーリフォームの実績や有資格者の有無を確認する
リフォーム会社や地元の工務店ならどこでも同じ、というわけではありません。
一般的な、新築やおしゃれな間取り変更が得意な業者であっても、高齢者の方の身体のメカニズムや、介護保険の複雑な申請手続きには全く詳しくない、という業者さんは意外と多いのです。
業者を選ぶ際は、必ずホームページなどで
「介護リフォームの施工実績が豊富であるか」
「福祉施設やバリアフリーの実績があるか」を確認しましょう。
また、社内に「福祉住環境コーディネーター(2級以上)」などの専門資格を持ったスタッフがいる会社を選ぶと、介護保険の「理由書」の作成や市区町村との事前の書類のやり取りもスムーズに代行してもらえるため安心です。
ケアマネジャーへの相談と、複数社からの「相見積もり」での比較
どこに頼めばいいか全く見当がつかないときは、まず担当のケアマネジャーに「介護リフォームに慣れている、地元の良い業者さんを知りませんか?」と聞いてみるのが一番の近道です。
ケアマネジャーは、過去に他のお宅で何件もリフォームの現場を見てきているため、地域で評判の良い、誠実な業者さんをいくつか紹介してくれます。
また、紹介されたからといって1社だけで即決せず、できれば2〜3社から「相見積もり(あいみつ)」をとって、金額や提案内容を比較しましょう。
その際、「ただ安いから」という理由だけで選ぶのではなく、「私たちの話をじっくり親身に聞いて、ご本人の今の身体のツラさに寄り添った提案をしてくれているか」という姿勢を大切にチェックしてみてください。
工事が終わっても安心!施工後のメンテナンスと保証制度の確認ポイント
多くの人が見落としがちですが、契約のハンコを押す前に必ず業者へ確認してほしいのが「工事が終わった後のアフターサポートと保証内容」です。
介護リフォームで取り付けた手すりやスロープは、毎日の生活の中でご本人の全体重がかかる、いわば「命を預ける命綱」です。
数ヶ月〜数年使っているうちに、万が一ネジが緩んでガタついてきたり、引き戸の立て付けが悪くなって開けにくくなってしまったら、大ケガにつながる恐れがあります。
- 契約前に聞くべきチェックリスト
- 「万が一、手すりがガタついた場合は、すぐに無料で点検・修繕に来てもらえますか?」
- 「施工後の製品保証や工事自体の保証期間は何年間ですか?」
- 「リフォーム完了後、定期的なアフターメンテナンス(点検)の制度はありますか?」
工事が終わった後も、気軽に「ちょっと見に来て」と相談できるような、地域密着型のアフターフォローがしっかりした業者を選ぶことこそが、本当の意味での「長期的な安心」につながります。
補助金を賢く活用して、家族みんなが安心して暮らせる住まいへ
毎日の在宅介護の中で、自宅に危険な段差があったり、お風呂やトイレでの立ち座りがツラい状態をそのままにしておくことは、ご本人にとっても、そして毎日一生懸命サポートしているあなたにとっても、大きなストレスやケガのリスクとなってのしかかってきます。
ですが、今回ご紹介した公的介護保険の「上限20万円」の住宅改修費支給や、市区町村独自の心強い助成金制度を賢く活用すれば、驚くほど自己負担を抑えて、安全でピカピカなバリアフリー環境を整えることができます。
- 損をしないための重要ポイントおさらい
- 工事を始める前に、必ずケアマネジャーに相談して「事前申請」を出す!
- 介護保険の20万円の枠は、身体の変化に合わせて「分割利用」ができる!
- 業者は「介護リフォームの実績」と「施工後のアフター保証」で選ぶ!
まずは、一人で悩まずに、担当のケアマネジャーや、地域の「地域包括支援センター」へ「自宅のバリアフリーのことで相談したいのですが…」と、気軽な気持ちで声をかけてみてください。
補助金という国の応援を上手に受け取って、家族みんなが笑顔で、安心して暮らせる優しい住まいをつくっていきましょう。
介護にはお金がつきものです。民間の介護保険を探したい時は、次のようなところに相談してみるのもいいかもしれません。相談だけなら無料です。↓

